住めば都

地方移住したアラフィフ主婦のひとりごと

《ソロ活》映画「ナイトフラワー」

二人の子供を育てるシングルマザーで、ドラッグの売人になる夏希役に北川景子さん。
ボディーガードから家族同然の存在となっていく格闘家、多摩恵役に森田望智さん。
どちらもイメージとかけ離れた役どころで、公開前から楽しみにしていました。


便座でだらしなく寝落ちしたり、カラオケで「深夜高速」を歌ったり。オープニングからはじめて見る北川景子さんが新鮮でした。
物語前半は、夏希家庭の生活苦の描写がひたすら続きます。
無料だと思っていたバイオリン教室の月謝を、小学生の娘・小春が路上演奏して自ら工面していたことを知る場面。そして廃棄された餃子弁当を拾ってきて、子供たちと食べる場面。
母親としての惨めさ、不甲斐なさが痛いほど伝わる、印象的なシーンでした。


多摩恵役の森田望智さんも、文字どおり体当たりの熱演。
半年かけて食事管理と肉体改造に取り組み、7kg増量して撮影に臨んだそうです。デリヘル嬢をしながら格闘家として成功することを目指す多摩恵。作中ほとんど笑顔を見せない彼女が、夏希や子供たちと過ごす時間だけ表情を和らげていきます。
格闘技の試合のシーンは素晴らしかったです。血まみれになって闘う迫真の演技で、むき出しの闘争心が圧巻でした。ふたり揃って今年の報知映画賞、主演&助演女優賞をW受賞されています。


夏希の顧客で薬物中毒になった女子大学生が死亡したことで、仮初めの幸せが綻びはじめました。警察の摘発を免れるため、ドラッグの元締めから用済みとみなされてしまうのです。
貧困から子供を救いたくて犯罪に手を染めた母親と、裕福でも希薄な家族関係のすえに娘を喪った母親。愛だけでも、金だけでも、人は幸せになれない。
そして違和感だらけのあのエンディング。
一見ハッピーエンドのようですが、やはりバッドエンドだったのだろうと私は解釈しました。原作は未読です。
反社や闇バイトが社会問題とされる昨今。違法に稼いだ金で我が子を育てたところで、めでたしめでたしとはならないでしょう。多摩恵の幼馴染の青年があっさり殺されていたので、ドラッグ密売の実行犯である夏希と多摩恵を生かしておくほうが不自然です。終幕のあれは亡き夏希たちの残留思念、魂が望んだ幸福の残滓だったのではないかと思います。
夏希が働いていたスナックの店名が楽園だったような…。ラストでは夜しか咲かないはずのナイトフラワーが昼に花開いていました。